PythonでMayaプラグインを作成する - HelloWorld編

先日、Autodesk Maya 2016 (以下、Mayaと略す)を試用した。PythonでMayaプラグインを開発するためである。

## Maya Python API

本当にこのAPIは使われているのだろうか。

MayaはPythonでコールできるAPI "Maya Python API" を提供している。同APIは1.0と2.0と2つのバージョンが存在するが、[Maya ヘルプ: Python API 2.0 を使用する](https://help.autodesk.com/view/MAYAUL/2016/JPN/?guid=__files_GUID_B1CD0989_EB49_46BE_934F_F23BFB869142_htm) を読む限り互換性はない。

> 新しい API クラスと古い API クラスを同じスクリプト内で使用することができますが、 > それらのオブジェクトには相互運用性はありません。

APIに互換性がないということは、プログラム内でバージョンを明示する必要があるはず。先のAutodeskのドキュメントを読み進めるとこのように記されている。

> 新しい API を使用するプラグインを記述する場合、プラグインは maya_useNewAPI と呼ばれる関数を定義しなければなりません。

さらに、[Maya ヘルプ: Maya Maya Python プラグインの Learning Path](https://help.autodesk.com/view/MAYAUL/2016/JPN/?guid=__files_GUID_856DDB26_93E7_493D_A1D4_60C4CBA38B9C_htm) を読むと、よりショッキングな記述がある。同APIの2.0は1.0の機能を受け継いでいるわけではないようだ。廃止されたAPIがあって、そのような流れなら理解できるが、下記の記述はAPIに対する不安を抱かせる。本当に大丈夫なのか。

> 2.0 API は高速化され、より「Python に近い」ものになりましたが、まだ 1.0 のすべてのフィーチャは 2.0 で使用 できません。この API と旧式の 1.0 API の違いについては、「Maya Python API 2.0」を参照してください。

このように私はMaya Python APIに不安を感じているが、業界の方々は本当にこのAPIを使っているのだろうか。

## プラグインの実装

気を取りなして、具体的な実装方法について見ていきたい。どうやらMayaのプラグインには種類があるようだ。ここでは大まかな流れを把握したいので、Hello Worldと表示するコマンドプラグインを作っていく。

まずはMayaのプラグイン機構に対応するために実装が必要のメソッドを探す。[Maya ヘルプ: コマンド プラグイン](https://help.autodesk.com/view/MAYAUL/2016/JPN/?guid=__files_GUID_85B1116E_F0C1_42AD_9CD4_30E936B6C7B8_htm)にはこのように書かれている。

> Maya プラグインには initializePlugin() および uninitializePlugin() という 2 つの関数が必要であり、 > それぞれ Maya がプラグインのロードおよびアンロードを試みるときに呼び出されます。 > これら 2 つの関数がファイル内に存在しない場合、プラグインはロードに失敗します。

つまり、Python API 2.0を使ってMayaプラグインを実装する場合は前述のmaya_useNewAPI()を含め下記のメソッドの実装が必要だ。

  • maya_useNewAPI()
  • initializePlugin()
  • uninitializePlugin()

コマンドプラグインの場合には、Mayaに読み込ませるためにクラス MFnPlugin が持つregisterCommandおよびderegisterCommandの実装をする。initializePluginでregisterCommandを呼び、uninitializePluginでderegisterCommandを呼ぶといった形になる。

実際に処理内容は、maya.api.OpenMaya.MPxCommandクラスを継承し、doItメソッドに記述する。今回はここにHello Worldと出力する処理を入れる。

## プラグインのロードとパス

さて、次に自作プラグインのデプロイ先について調べたい。

Mayaは特定のパスからプラグインをロードする。このパスは同アプリのスクリプトエディタで"getenv MAYA_PLUG_IN_PATH"とMELコマンドを実行することで確認が可能だ。実行結果はOS毎に異なる。Autodeskの[Maya ヘルプ: ファイル パス変数](https://help.autodesk.com/view/MAYAUL/2016/JPN/?guid=GUID-228CCA33-4AFE-4380-8C3D-18D23F7EAC72)に詳細がある。下表に示す。なお、変数で表記できるところはそのようにした。

<table> <thead> <tr> <th>OS</th> <th>パス</th> </tr> </thead> <tbody> <tr> <td>Windows</td> <td> <ul><li>%SystemDrive%:/Users/%USERNAME%/Documents/maya/{version}/plug-ins</li> <li>{ユーザ フォルダ}/Documents/maya/plug-ins</li> <li>{Maya ディレクトリ}/bin/plug-ins</li></ul> </td> </tr> <tr> <td>Mac OS X</td> <td> <ul><li>$HOME/Library/Preferences/Autodesk/maya/{version}/plug-ins</li> <li>$HOME/Library/Preferences/Autodesk/maya/plug-ins</li> <li>/Users/Shared/Autodesk/maya/{version}/plug-ins</li> <li>/Users/Shared/Autodesk/maya/plug-ins</li> <li>/Applications/Maya {version}/Maya.app</li></ul> </td> </tr> <tr> <td>Linux</td> <td> <ul><li>$MAYA_APP_DIR/maya/{version}/plug-ins</li> <li>$MAYA_APP_DIR/maya/plug-ins</li> <li>/usr/autodesk/userconfig/maya/{version}/plug-ins</li> <li>/usr/autodesk/userconfig/maya/plug-ins</li> <li>$MAYA_LOCATION/bin/plug-ins</li></ul> </td> </tr> </tbody> </table>

実際にどこまでのパスをMayaが認識しているかは各自で確認されたい。

もし、上記の他に任意のパスを追加したい場合は環境変数 MAYA\_PLUG\_IN\_PATHにそのパスを宣言すればよい。シェルがbashなら、$HOME/.bashrcに以下のように追記する。なお、この値が有効になるのはbashからMayaを実行した時である。

<script src="https://gist.github.com/hiroakit/a8995fd5a88978248545.js"></script>

下記はHello Worldを出力するコードである。興味のある方はMayaのプラグインマネージャーで読み込み、スクリプトエディタでHelloWorldと実行してみてほしい。

<script src="https://gist.github.com/hiroakit/b795f43f3d0d938cfb01.js"></script>